Q:毎年フィラリアの予防前に血液検査をするのはどうしてですか?
他の獣医さんでは、車で配達してくれ、検査せず予防薬をくれるところや、インターネットでも通販しています。非常に便利なんですが・・・・。


A:まずは、フィラリア予防薬の箱書きから。
 
『本剤は、要指示薬であり、獣医師の処方箋、指示により使用してください。本剤投与前に必ず血液検査を行い、犬糸状虫(フィラリア)がいないことを確認した後、投与すること。』

 
が明記されています。なぜなら、万が一フィラリアに感染しているのに予防薬を投与した場合、命をおびやかすような副作用が強く出てしまうからです。たしかに、ノミ駆除剤のように(これも効果のほど、副作用を考えるとあまりおすすめできませんが)ホームセンターや、ペットショップ、インターネットで売っていれば便利です。自宅に配達してくれたら楽できます。ちなみに、私自身生来ものぐさなので、動物を車に乗せ、車内を汚し、わざわざ動物病院に出かけなくてもいいのなら、それですましたいと思う気持ちはよく理解できます。しかし、それではあまりにも危険が大きいのです。将来、感染動物にも安全に投薬できる予防薬や、100%の予防方法ができたならば、検査の必要はなくなるでしょう。
 獣医の立場から申し上げると、獣医師たるもの、動物の顔、息づかいなど健康状態を診ずに薬を処方したり、注射をするべきではありません。薬屋さんでよいと考える獣医さんや、便利でいいやと考える飼い主さんとは、根本的に考えを異するものなので、しかたがありません。


 当院では、フィラリア検査の時、健康診断を兼ねた、わん・にゃんドッグをおすすめしています。
 せっかく、痛い思いをして採血したのに、フィラリア検査だけではもったいない。言葉を話すことができない動物のために、病気をいち早く発見するために利用していただいております。
 現在ではほとんどの方に理解を得、フィラリア検査だけでなく、血液一般検査(赤血球数・容積・血色素量・白血球数・血小板数)、肝臓・腎臓の生化学検査を実施しております。毎年行うことに意義があり、前年度の数値と比較することによって、病気の早期発見・早期治療に役立っております。
 前号の『健康大辞典』でも取り上げた腎疾患などは、中高年期にかけ、発生率はグンと増加し、臨床症状が出た後では、コントロールさえままならない病気です。少なくとも定期検査でひっかかるならば、コントロールしていくことも可能なのです。
 猫ちゃんの飼い主さんにも朗報です。いままで日本になかった、猫用フィラリア検査キットが販売され、猫ちゃんのフィラリア感染も診断可能になりました。猫ちゃんも蚊にさされることで、フィラリアに感染します。愛猫にできる限りの予防を考えている方は、フィラリア予防薬を与える前に、検査をおすすめいたします。