この患者様は、子宮蓄膿症という病気になり、緊急手術により卵巣・子宮を摘出し、一命を取り留めました。その後の経過は順調で、順調すぎて体重が増加してしまったようです。
A:
一般的に、避妊・去勢手術後は太ると言われます。手術前に私がいつも話すのが、太ってしまう前の食事制限です。なぜなら減量中の動物が受けるストレスより、飼い主様のほうが減量させることにストレスを感じてしまうからです。
太ってしまう病気ももちろんあります。消費エネルギーの低下を示す病気で、甲状腺機能低下症という病気があります。活動性が低下し、食欲があまりないのに、太ってきてしまうのなら要注意です。血液検査によって診断が可能な病気なので、ぜひご相談ください。
また、異常な食欲によって太る場合があります。副腎皮質機能亢進症という病気です。この病気の場合、水の飲み方も異常に増えるのが普通です。この病気も血液検査で診断可能です。
ちなみに『食べると太る』が道理なのに、『食べても痩せる』病気に、糖尿病・甲状腺機能亢進症があります。動物の糖尿病は近年かなり増加していますので、要注意ですね。糖尿病では、水の飲み方も多くなります。
次に実際のダイエット法についてお話しましょう。
摂取カロリーと、消費エネルギーの差が体重増加になることはお分かりになるでしょう。体重が増えるということは、必要以上にいっぱい食べているからなのです。運動で消費させるのはなかなか大変なことなので、やはり食事を工夫するしか、ダイエットの方法はありません。
@ 食事をカロリーの低いものにかえます。シニア食・ライト食に変えるのですが、それでも減量できない場合は、病院に減量用処方食があります。
A 減量食にしても体重が減らない場合は、2〜3割食事量を減らします。食べる量が減るために動物が満足感が得られない場合は、ドライフードをふやかして(通常ドライフードをお湯につけると15分くらいで倍量に増加します。)見た目の量を増やしてください。食後の歯磨きは忘れずにね。
B おやつをどうしても与えたい場合は、なるべくカロリーが低いものを選択してください。そして、与える分だけ食事のカロリーを減らさなくてはいけません。病院には減量用ビスケットもあります。
C 動物の満足感は、得てして飼い主様の満足感の場合が多いため、どうしても食事量が減ってかわいそうに思えるならば、食事回数を増やしてみたらいかがでしょうか。その場合、ふやかして倍量にした食事を、一日の摂取量の範囲で、小分けにして与えるのです。
動物も、きっと『エッ!!また食べていいの?』と感じることでしょう。
D ホームメイド食の場合は、食材をカロリーの低い鳥のササミ・もも肉を使い野菜を多くし、寒天等で量を増やして与えるようにしましょう。
E ネコちゃんの減量の場合、おいときっぱなしの食事はやめて、朝・夜2回の食事にしましょう。ワンちゃんに食事を与える時と同じように、与えた食事を食べなければ、器をさげるようにしてください。次の食事のときはちゃんと食べてくれるでしょう。その場合、朝食べなかったからといって、夜の食事量は増やさないでください。一日の摂取量を測ったならば、その量を均等に与えたほうが、翌日の朝はしっかり食べてくれるようになります。
※ 動物の食事に『○○ダイエット』と書いてありますが、このダイエットは英語で『食事』という意味で、減量食という意味ではありません。カロリーが低いものかどうかお確かめになって、ご購入下さい。
以上のようにしてあげることで、きっと減量は成功するでしょう。動物が減量できるかどうかは、飼い主様のお気持ちしだいです。動物自身が、買い物をして自由に食べることはできません。あなたが与えたものが、お肉になっていくのです。太ったことで病気になったならば、あなたが加害者なのです。
ヘルニアによる腰痛、関節炎による歩行障害、内臓疾患、糖尿病、心臓疾患の悪化、肥満が原因で起こる病気はニンゲンと同じです。私自身、わが身を考え、いっしょに減量をがんばりましょう。