げっ歯類の病気

ハムスター・モルモットなど




腫瘍

ハムスターなどにも多く腫瘍がみられます

1歳のジャンガリアンです。太ももにおおきな腫瘍があり、自壊出血しています。細胞診で判断がつかない腫瘍でしたが、このままでは生活の質は下がっていくばかりです。外科手術をすることになりました。

手術は無事に成功し、切除した腫瘍は2.5cmもありました。病理検査に出せば悪性か良性かの診断ができますが、この症例では行っていません。悪性でも、犬・猫のような抗がん剤治療が不可能だからです。

1歳半のジャンガリアン、腕の付け根の腫瘍です。急速増大した腫瘍のため、外科手術を選択しました。吸入麻酔で行うのですが、生体モニターの装着ができないので、犬猫に比べリスクは高まります。

手術は成功し、1cmの腫瘍を切除しました。ジャンガリアンの2歳以上の老体では、麻酔のリスクが高すぎ外科手術はお勧めできません。早期発見・早期治療を心がけ、毎日ハムちゃんを触るようにしましょう。


1歳のジャンガリアンの腕がはれています。腫瘍の可能性がありレントゲンを撮りました。骨が一部融解しております。

感染症で起きる場合もありますが、腫瘍の可能性が高い像です。腫瘍は体のいたるところにできますが、このようなケースでは断脚手術を行います。この仔も手術に良く耐え、術後1年生存しました。前肢を失うと、頬袋から食べ物を取り出せないので、飼主様のお手伝いが必要です。


骨折

ハムスターなどでは、回し車や落下事故、ケージに挟み多発します

8ヶ月のジャンガリアンの後肢、膝の下の部分が正常でない方向に折れ曲がっています。下腿骨の骨折です。ハムちゃんの四肢の骨折は、回し車の事故などで多い疾患です。

下腿骨は固定ができる場所なので、被毛を利用し外固定しました。外固定ができない場所では、断脚覚悟の手術による内固定、もしくは安静にして癒合を待ちます。

1週間後ギブスは自然と取れていましたが、骨折部位は固まった(曲がっていますが日常生活には問題ありません。)ようです。骨折端の接触による腫脹は抗生剤の内服により治癒しました。

別のハムちゃんの前腕部の骨折です。この箇所での骨折は、外からの固定が不可能です。手術による内固定も可能性は低いため、断脚手術かそのまま経過観察するしかありません。


皮膚疾患

寄生虫・細菌感染・ホルモン性・食事性など原因は様々です

4ヶ月のモルモットの全身の毛が薄くなり、フケが浮いています。痒みがあり、皮膚はただれ一部出血しています。鑑別診断のため、真菌培養・皮膚細胞診・顕微鏡検査が必要です。

皮膚を削り顕微鏡検査すると、ダニがいます。疥癬症です。様々な動物に感染する寄生虫で、検査しなければわかりません。皮膚病は原因が様々で、鑑別診断や除外診断が必要です。疥癬症・毛包虫症などダニによる皮膚炎は、げっ歯類にも比較的多く見られる疾患です。

2歳のハムスターの腹部の皮膚炎です。脱毛し、皮膚はただれ、ふけのようなかさぶたが浮いています。皮膚の顕微鏡検査で、細菌感染が疑われました。2週間の抗生剤投薬で治癒しました。寄生虫だけでなく、このように細菌や真菌(カビ)などの皮膚炎も多発します。

3ヶ月のジリスの顔面の脱毛です。鑑別診断で原因を見つけられません。蛋白欠乏症などの栄養性・ホルモン性脱毛が疑われます。飼養管理の改善、除外診断のための投薬をしましたが反応がありません。このように、犬・猫に比べ診断がつかない症例が多いのも事実です。


歯牙疾患

ケージなど硬いものを咬むことで起きます

2歳のハムスターが切歯が伸びすぎ食事ができません。口を閉じることができず、下顎の切歯は根元から曲がり、上顎に刺さっています。げっ歯類の歯は常に伸び続けるため、硬いものを咬みすぎることで根元から曲がり、咬み合わせが悪く削れていかなくなるのです。

適切な長さで切り、食事ができるようになりました。しかし今後も定期的な処置が必要です。プレーリーなどで診られる、上顎切歯の破折(歯が折れてしまうこと)では、折れた部位から細菌感染を起こします。そのため歯の根元が腫れ鼻道が閉塞し、膿性鼻汁排出・呼吸困難になります。