頭部にできた腫瘍

表面だけでなく、口の中、耳の中にも注意しましょう


猫の多発性骨軟骨腫症

非常に珍しい病気で、全身に骨様腫瘤が形成されます

飼主不明のネコちゃんが保護されました。後躯麻痺の状態で、前足で歩行しています。頭骨・乳腺に多発的な骨様腫瘤、左右瞳孔の不対称、血液検査で猫白血病ウィルス陽性でした。

レントゲンで頭骨に骨様腫瘤が観察されます。その他、胸腔内の骨様腫瘤も観察されました。残念ながら当院で確定診断は不可能なので、大学病院での精査をお願いしました。

麻布大学でCTをとりました。頭骨の表面だけでなく硬膜外にも骨様新生物が確認できます。
保護されてから2週間後、脳障害の症状で死亡しました。

剖検後の病理検査で多発性骨軟骨腫症が診断されました。この病気は、有効な治療法がない病気です。神経の病気 のページでも詳しく掲載しております。


鼻の中にできた腫瘍

初期の症状は、くしゃみ・鼻水・鼻血です


軟骨肉腫

初期の症状は鼻血でした

6才のM.ダックスが、3ヶ月前からの鼻血が主訴で来院しました。レントゲンでは鼻血が出ている鼻腔が白く濁っています。まだ骨が溶けた様子はありませんが、腫瘍ならば骨を溶かしていきます。組織病理検査では、軟骨肉腫の疑いという検査結果です。

鼻の中の腫瘍は悪性のものが多く、放射線治療が唯一の治療法です。当院での治療は不可能なので、大学病院をご紹介しましたが、飼主様のご希望で緩和治療のみ当院で行うことになりました。
腫瘍は徐々に増大し顔が変形しましたが、4ヵ月後に亡くなるまで、自宅で家族の皆様と暮らすことができました。
ヒトの時間に換算すれば1年半がんばったことになります。


前頭洞の腫瘍病変

初期の症状は、くしゃみ・鼻水でした

11才のラブが、目の上がはれているという主訴で来院しました。レントゲンを撮ると、明らかに、前頭洞内が白濁し骨膜反応・骨造成・融解が始まっています。悪性腫瘍を疑い組織病理検査をお勧めしましたが、飼主様は緩和療法のみを選択いたしました。

鼻出血は多少コントロールができましたが、顔は変形し目を開けることもできず、元気や食欲も失われ、3ヵ月後に飼主様のご希望で安楽死致しました。顔面にできる腫瘍は顔を変形させ、見るもかわいそうな姿になります。早期発見・早期治療が望まれます。


鼻梁部の腫脹(腫瘍ではなかった病変)

見た目では腫瘍との区別は困難です

雑種のネコちゃんが、鼻梁部が腫れています。細胞診で膿が採取されました。毛を刈ると外傷部が観察できました。外に出るネコちゃんなので、ケンカ傷が原因の膿瘍だと考えられます。
切開・拝膿・洗浄・抗生剤の投薬で治癒しました。

レントゲン上では前頭洞に上記のような白い部分が観察できます。レントゲンだけでは腫瘍との区別がつかないため、細胞診が必要な症例です。鼻の上の傷が骨を溶かし鼻骨に孔を開け、前頭洞に達する大きな膿瘍を形成していました。


口腔内の腫瘍

口の中にできる腫瘍も多くあります


上顎にできた骨肉種

悪性腫瘍です

ワンちゃんが口から出血してます。左上顎の歯を覆うように、正中近くに達する腫瘍です。麻酔下のバイオプシーを実施し、確定できない悪性腫瘍と診断されました。

レントゲンでは骨の溶解は診られませんでした。根治のため上顎骨を含めた腫瘍の切除手術を実施しました。貧血があり、術中の出血も予想され輸血が必要でした。

出血をコントロールするため、左頚動脈を結さつし、犬歯を含め鼻腔に達する左上顎の骨をドリルで切除しました。切除組織による病理学的診断は骨肉種です。

手術後の経過は順調で、出血はなくワンちゃんは元気に食事をとることができます。見た目も変化はありません。抗がん剤の治療をお勧めしましたが、現在無治療で経過観察中です。


歯原性良性腫瘍

象牙質腫と診断されました。

13歳甲状腺機能低下症のワンちゃんが、健診で口腔内に2cmの腫瘍が見つかりました。

おとなしい子だったので、無麻酔で針生検が実施できました。特殊な器具を使用します。

病理検査結果は歯原性良性腫瘍(ゾウゲ質腫)です。増大傾向のため手術を実施しました。

歯石除去後、腫瘍のある歯を抜歯し、歯肉の過形成も切除しました。現在良好です。