乳腺腫瘍

悪性も良性もあります。最初はゴマ粒大の大きさです。

乳腺腫瘍は発情との関連が多く、2回目までの発情(生後1歳半くらい)までに避妊手術を行えば、発生をかなり抑えることができます。(乳腺腫瘍の予防に、避妊手術が有効であることは証明されております。)
ワンちゃんの乳腺腫瘍は50%が悪性、ネコちゃんではほとんどが悪性であるため、発見と同時に手術することが最も重要です。悪性の場合転移するため、オッパイにできたしこりがたとえゴマ粒大でも油断がなりません。通常は、切除手術→病理検査→悪性であれば抗がん剤治療を約半年続けます。良性ならば、手術のみで終了です。


乳腺腺癌

炎症性乳癌を疑わせる所見

10歳のボストンテリア、1回の出産歴、避妊手術はしてありません。2年前に乳腺のしこりを他院で診てもらい、経過観察。最近急速に大きくなり当院に来院しました。
右側乳腺に1〜2cmの腫瘍点在、左側最後乳腺の腫脹・硬結のため、右側乳腺全摘、左4・5乳腺の領域切除手術を行いました。
レントゲン上肺転移なし、疼痛なし、元気・食欲良好でした。

病理検査は右側乳腺は良性の乳腺腫瘍、急速増大した左側乳腺は乳腺腺癌で、リンパ節に転移し炎症性乳癌を疑わせる所見を示していました。
飼主様には非常に悪性度の高い乳癌のため、抗がん剤治療をお勧めしました。手術2ヵ月後頃より両後肢のむくみ、炎症性乳癌を示唆させる手術部位のただれが出現しましたが、痛みはありませんでした。

術後4ヶ月頃より、肺転移による胸水の貯留が見られるようになりました。週1〜2回の胸水除去が必要で、術後5ヶ月でお亡くなりになりました。
飼主様は看護婦さんであり、乳癌や抗がん剤に対してご理解を得ることができたため、ヒトの時間に換算すると術後約2年間、抗がん剤治療を続けながら、比較的痛みもなく飼主様と過ごすことができました。

炎症性乳癌は手術適応外の乳腺腫瘍なのですが、おそらく今回のケースは臨床的に炎症性乳癌の前段階であったために痛みもなく、手術可能で、その後も抗がん剤によりある程度コントロールできたものと考えております。
2年前乳腺腫瘍の発見時に手術していれば、結果がかなり異なっていたものと考えられ、早期発見・早期治療の必要性を再認識します。


炎症性乳癌についての詳しい情報はこちら

袋井市の、あいの動物病院ホームページ です


悪性乳腺混合腫瘍

手術後、抗がん剤治療したが転移・死亡した症例

16歳雑種のワンちゃん、避妊手術をしてません。1ヶ月前にオッパイのしこりを発見。2週間前から急速増大し来院しました。
レントゲン上肺転移はなく、左弟5乳腺が腫脹・硬結し、痛みのため元気・食欲が減退しています。

弟4・5乳腺の領域切除を行い、避妊手術も実施しました。病理検査の結果、骨肉腫成分を含む悪性の乳腺腫瘍のため、月1回の抗がん剤治療を7ヶ月続けました。転移像がないため、抗がん剤を2ヶ月に1回にしたところ9ヶ月目に転移が認められました。

この頃突然の後躯麻痺があり、脊椎への転移も疑われましたが、脊椎のレントゲン上に変化はありませんでした。麻痺は治療に反応し、徐々に改善しました。
抗がん剤を月1回の投薬に戻しましたが、肺の影は徐々に増大しております。

手術して1年後、歩行も可能になったのですが、肺転移による胸水をコントロールできず、呼吸不全によりお亡くなりになりました。
いずれの症例にもいえることですが、発見時にすぐ手術すれば、予後が違ったものになっていたかもしれません。


悪性乳腺混合腫瘍

手術後、抗がん剤治療しなくても転移しなかった症例

10歳のビーグルで、2年前他院にて乳腺腫瘍の手術を実施したのですが、他の乳腺に多発的に腫瘍ができ、最近徐々に大きくなってきたそうです。右第3乳腺の部分切除がしてあり、その時避妊手術は実施されていませんでした。
今回は、左乳腺にはは乳頭ごとに1〜4cmの腫瘍ができ、右第4乳腺に4cmのものがあります。レントゲン上では転移は認められませんでした。左側乳腺切除、右第4・5乳腺領域切除を実施いたしました。

病理検査の結果、1cmの大きさの左第2乳腺のみ悪性で、その他の4cmになる大きな腫瘍は良性でした。腫瘍は大きさではありません。病理検査ではじめて分かることです。残された右第1・2乳腺の手術や、抗がん剤治療をお勧めしましたが、同意を得ることができませんでした。しかし、このワンちゃんは手術後4年経過しましたが、再発・転移しておりません。
今回避妊手術も同時に行ったことが、再発防止になっている可能性があります。