8歳のラブラドールが、おなかが腫れているということで来院しました。2週間前から食欲不振です。レントゲン検査で脾臓の位置に塊があるのが診られ、超音波検査で確認しました。レントゲンで腹部全体が白くなっているのは、腹水がたまっているためで、針を刺して検査すると出血です。
脾臓の腫瘍は出血を起こしやすく、手術しない限り出血は止まりません。血液検査で、重度の貧血、白血球上昇、血小板減少がありました。術前・術中に輸血しながら手術を行いましたが、術中死いたしました。せめて2週間前ならと、いつもながら考えてしまいます。
10歳のG.レトリバーが元気はあるものの、10日前からの食欲不振で来院しました。血液検査で異常はありません。経過観察しましたが食欲が改善しないため、初診から2週間後、レントゲン検査、超音波検査を実施いたしました。
抗がん剤投薬5日後に死亡いたしました。
G.レトリバーは癌になりやすいといわれます。初診時に詳しい検査を行わなかったことが悔やまれます。しかし、たとえ確定診断されても、この病気と戦うことができたか自信はありません。
12歳の雑種のワンちゃんです。嘔吐・下痢が通常の胃腸炎の治療に反応しません。
入院治療をしましたが、症状は悪化する一方です。血液検査では低アルブミン(蛋白成分の一つ)が進行しています。
バリウム検査で異常はありません。
腹腔内に腫瘍があり、盲腸を中心に腸管を広範囲で巻き込み癒着しております。腸管は一部に孔が開き、汚物が腹腔を汚染していました。幸運にも癒着した腸管を、腫瘍とともに完全切除することができました。
病理検査は悪性神経鞘腫という結果でした。
2回の輸血が必要でしたが、術後4日で退院できました。手術後1年半経過し再発・転移の兆候はないようです。抗がん剤治療はしてません。
私に超音波の技術・精度があれば、腸穿孔による腹膜炎になる前に、診断ができていたと反省しております。
飼主不明ネコの避妊手術時に、偶然見つかった腫瘍です。ネコちゃんの年齢は不明ですが、若猫です。腸管に瘤ができていました。切除し病理検査したところ、悪性リンパ腫です。
保護した方に抗がん剤をお勧めしましたが、選択されませんでした。予後は不明です。
切除した腸管を切ってみると、腸管の内腔には潰瘍病変がありました。この程度の病変では、臨床症状はなかったかもしれません。
進行すれば、嘔吐や下痢・血便等の消化器症状が出てくるでしょう。このような、偶然発見される腫瘍は少なくありません。