胸腔にできた腫瘍

発咳・呼吸の異常、全身状態の悪化で気がつきます


正常なワンちゃんの胸部レントゲン写真

正常を知らずして異常は発見できません

横から撮ったレントゲンです。レントゲンは、固い物質ほど白く写るため、骨・血管・臓器などは白く写ります。空気や水は黒く写ります。肺は空気を多く含む臓器のため、黒く抜けたようになりますが、そこに腫瘍などの塊があれば、当然白くなることで、肺の腫瘍が確認できるのです。
しかし、レントゲンは3mm以下の小さい塊は透過します。そのため、細胞レベルや腫瘍が小さいものでは発見できません。早期発見といえど、レントゲンで転移が確認できた時点で、予後は厳しいものといえるでしょう。

これは仰向けに撮ったレントゲンです。腫瘍をレントゲンで確認する精度をあげるため、通常3方向(右下・左下・仰向け)の写真を撮るようにしております。


肺の異常

通常呼吸器の異常(咳、呼吸が荒い等)が診られます


乳腺腫瘍が転移したレントゲン像

悪性乳腺混合腫瘍が転移しました

乳腺腫瘍のページで詳しくご紹介してある症例です。
乳腺切除手術9ヵ月後に発見されました。抗がん剤治療を、手術直後は月1回、7ヶ月を過ぎた時期から2ヶ月に1回の投薬をしていました。

肺への転移を確認してから、3ヵ月後に死亡いたしました。
このような孤立した病変は肺原発の腫瘍が多く、この症例では経過から乳腺腫瘍の肺転移と仮診断しました。


肺の腫瘍病変

肺以外には腫瘍らしきものは発見できませんでした

6歳のシェルティーが数週間前から、元気・食欲不振、呼吸が荒い主訴で来院しました。
レントゲンで肺が粟粒状に濁っています。身体検査で、これ以外の異常や腫瘍が確認できません。レントゲンから肺原発腫瘍または腫瘍の転移であると仮診断しました。確定するためには原発巣を探し出すか、病理学的検査しかありません。

これは仰向けのレントゲンですが、正常なものと比べると、肺の濁りが確認できます。血液検査で白血球上昇、溶血性貧血、血小板の低下が診られました。飼主様のご希望で、無治療のまま翌日死亡いたしました。


9歳のG.レトリバーが4日前から元気・食欲不振、歩行できない状態で来院しました。身体一般検査、血液検査、レントゲン検査、超音波検査の結果、肺に砲弾状の病変が散在しています。それ以外に腫瘍病変はありません。肺原発もしくは発見できていない腫瘍の転移です。重度の貧血、血小板減少、低蛋白血漿を呈していました。

輸血・点滴治療で翌日には歩行可能になり退院しました。4日後の再診で、貧血は改善され元気・食欲は以前に近い状態になりました。しかし、再診から6日後に突然死亡しました。
抗がん剤治療はしておりません。


前胸部にできた腫瘍

呼吸の異常が診られるでしょう


悪性リンパ腫

血液の癌ですが、塊をつくります

交通事故で顎骨・脊椎骨折をした、保護ネコちゃんです。顎骨・脊椎の手術をし、入院2ヶ月が経過、元気や食欲が回復した矢先、急に元気・食欲が低下しました。呼吸の異常も診られたため、レントゲン検査、血液検査をしました。胸水貯留、前胸部のマス病変、貧血があります。超音波ガイドによる細胞診の結果、リンパ腫が疑われました。

このネコちゃんは白血病ウィルス陽性でした。このようなネコちゃんでは、若猫でリンパ腫が発生します。リンパ腫は体のどこにでも現れますが、他の悪性腫瘍に比べると抗がん剤で戦うことができます。