12歳のシズーが口を痛がる主訴で来院しました。レントゲンを撮ると、下顎骨が骨折し、骨折ライン上の歯も割れています。交通事故ではなく、ソファーから飛び降り、顎をぶつけただけでの骨折です。悪くなった歯が原因で、少しの衝撃で顎骨が折れてしまう場合があります。
このワンちゃんは、中等度の心不全(僧坊弁閉鎖不全症)で、一年前から心臓の薬を服用しています。歯周病はひどくなく、割れた歯も現時点で問題なかったため、この歯を残しワイヤーで固定しました。手術法は様々です。
2ヵ月後、骨折は治癒しワイヤーをはずしました。本来ならば割れた歯も抜歯しなければなりません。しかし、再骨折の恐れを考慮し、割れた歯はこのままとしました。2年経過し、顎は問題ありませんが、心臓病は徐々に進行しております。
2歳のシーズーです。生後5ヶ月で突然起立困難となり、他院で加療、歩行可能になりました。その後、後躯のふらつきがあります。最近特に歩きたがらないという主訴で、レントゲンを撮りました。歯突起が分離し、転移しております。
これは正常なワンちゃんの歯突起です。歯突起は、頭と首の骨をつなぐ重要な骨です。この突起が分離、奇形、低形成、欠損する発育障害があったり、交通事故などの強い外傷により骨折し、後天的に発生する場合があります。
このワンちゃんの首を横から撮影すると、環軸関節が脱臼し離れています。生後5ヶ月に歩行困難、その後のふらつきを考えると、先天的に歯突起分離があり、脱臼したものと考えられます。この状態でまともに歩くことは困難です。
4ヶ月令のブルドッグが、後肢を痛がっています。レントゲン上で関節炎等の所見はありませんが、症状から股関節形成不全が疑われました。しかし、正しく診断するためには、正しいポジションでのレントゲン。麻酔下での、関節触診、ペンヒップと呼ばれる股関節の評価ができるレントゲン法が必要です。(ペンヒップは当院でできないため、できる病院が浜松にもあるのでご紹介いたします。)股関節形成不全は、このような検査を総合的に診断し、手術が必要か判断いたします。
いずれにしてもこの病気は遺伝性があり、この疾患を持つワンちゃんは、繁殖するべきではありません。
12歳のポメラニアンです。歩行の異常はありません。他の疾患のレントゲン撮影で偶然見つかりました。重度の関節変性で、脱臼しております。股関節形成不全が進行した状態が最も考えられます。しかし、犬種から考えると虚血性大腿骨頭壊死症も否定できませんが、対症療法は同じです。
虚血性大腿骨頭壊死症は小型犬に多く、大腿骨の先端が壊死し、変性を起こします。そのため進行した状態のレントゲン像が、このように見えるかどうかは、私の知識では判別できません。
幼少期の膝蓋骨習慣性脱臼をほおっておくと、膝を中心に骨がくの字に曲がり、足をつけなくなります。両足で発症すれば歩行できません。程度によりますが、2〜3ヶ月令なら毎日リハビリすることで曲がることを抑えることができます。根本治療は、手術しかありませんが、程度が軽ければ、手術しなくてもいい場合もあります。
ペットショップの4ヶ月令のパピヨンが、膝蓋骨脱脱臼で数週間前から後ろ足をつくことができません。膝蓋骨(俗に膝のお皿)のはまっている溝の骨を削って深く掘り下げ、伸びてしまった関節周囲の組織を縫い縮める手術をしました。
金属をはめ込む手術法もありますが、再発が多いため、当院では使用していません。その他、程度がひどければ骨の移植手術も併用する場合もあります。このワンちゃんは手術後、足は元どうりになり、飼い主さんも決まりました。
生後1ヶ月半のチワワが立ち上がることができず、腹ばいの姿勢でほふく前進ができるだけです。後ろ足の関節は正常でしたが、手首の関節(手根関節)がグラグラで、補助なしでは立ち上がることができません。『手根関節緩み症候群』と診断しました。
この疾患はまれな病気ですが、すべての犬種に発生します。手首はプラプラの状態で、立たせると、肉球の上の関節まで地面に着いてしまいます。治療は、片側一脚の関節を固定し、1週間ごと交互に交換することで、関節は徐々にしっかりしてきます。
関節がしっかりした時点で経過観察とします。このワンちゃんは、2ヵ月後には正常に近い着地ができるようになりました。後肢の関節にまで進行する場合があり、出来るだけ早期の処置が必要です。原因不明の、知らないと手遅れになってしまう病気です。
初期の症状は、動きたがらない、抱っこされるのを嫌がる、背中を触ると『キャン!!』と鳴くなど、痛みです。進行すれば、神経麻痺となる病気です。詳しくは 神経の病気 のページでご紹介します。