免疫系・血液の病気




糖尿病

犬も猫も多い病気です。遺伝、生活環境、肥満が原因でしょうか。

12歳のネコちゃんが、体重減少、多飲多尿の症状です。糖尿病と診断され、インスリン治療を開始しました。(動物の場合ほとんどが、インスリンが必要な症例ばかりです。)

インスリン治療のコントロールがうまくいかず、1ヵ月・3ヶ月後の2回、ケトアシドーシス性の昏睡状態になり、おのおの4日間入院治療を行い危機を脱しました。

現在は平均的に高血糖の状態ですが、朝・晩2回のインスリン注射(飼主様が実施)により、良好に経過しています。3.2kgまで減少した体重も、現在は5.0kgになりました。


免疫介在性溶血性貧血・免疫介在性血小板減少症

元気・食欲が失われ、時に皮膚に紫斑が出る場合があります

4歳のマルチーズ系雑種のワンちゃんが、2週間以上続く食欲不振、元気なしで転院してきました。下腹部に広範囲の出血斑(紫斑)が診られ、血液検査で中等度溶血性貧血、重度血小板減少、白血球上昇が観られます。

血液を染色し顕微鏡で確認します。血小板は明らかに少なく、白血球は炎症像を示していました。有核赤血球は血液の再生像です。普段は観察できない球状赤血球が観察されます。これは、免疫介在性溶血性貧血の所見です。

血小板減少症を伴う免疫介在性溶血性貧血と診断し、ステロイド、免疫抑制剤、抗がん剤(ビンクリスチン)で治療しました。1週間後の再診には、軽度貧血、血小板増多、白血球の正常化、出血斑の減少が診られ経過良好です。

多染性赤血球も赤血球の再生を示します。血小板も多数観察できます。1ヵ月後に完治しました。免疫介在性溶血性貧血は死亡率も30〜50%と高く、また他の病気に随伴して起きる場合もあるため、注意が必要です。


全身性紅斑性狼瘡(SLE)を疑う猫ちゃん

SLEは犬で多く、予後は非常に厳しい病気です

1歳のアビシニアンが耳介の発疹、下腹部の皮膚炎で来院し、アレルギー疑いで治療(食事療法・塗布薬・ステロイド)しました。治療に反応し、3週間後には耳介・下腹部の皮膚病変はなく、投薬中止できました。

投薬中止1週間後に、食欲廃絶・元気消失・耳介部病変の再発・後肢パット間の皮膚潰瘍が診られ来院しました。精査すると中等度再生性溶血性貧血・重度血小板減少・軽度腎臓障害・重度蛋白尿があります。

抗核抗体検査は陰性でしたが、全身性紅斑性狼瘡の症状です。ネコちゃんでは非常に珍しい病気で、ステロイド・免疫抑制剤で治療します。免疫抑制量のステロイドによく反応し、臨床症状は見る間に改善されました。

依然蛋白尿は持続しておりますが、貧血・血小板減少・臨床症状は改善されました。現在も微量のステロイドを投薬しておりますが、SLEであったならば、再発に対し厳重な経過観察が必要です。


重症筋無力症(MG)

免疫学的機序により骨格筋が障害される疾患

先天性では、ジャックラッセルテリア、スプリンガースパニエル、フォックステリアなどの犬種に多く、生後2ヶ月くらいで発症し、筋衰弱が進行的に顕著となります。
後天性はすべての犬種、ねこちゃんで発生しますが、特に1〜4、9〜13歳の中型〜大型犬(シェパード、G・レトリバー、R・レトリバー)、アビシニアン、ソマリに多く発生が見られます。骨格筋の衰弱が顕著に認められる典型例のほか、流涎、吐出、巨大食道症、咽喉頭麻痺、変声、誤嚥性肺炎、胸腺腫等症状は多岐にわたります。しかし、診断をつけることが非常に難しい病気のため、見過ごされるケースも少なくありません。
治療に反応するものの予後は良好で、犬では自然に治ってしまう場合もあるようです。猫は治療に抵抗するものが多いようです。


当院で重症筋無力症が疑われたケースは

神経系の病気 のページに掲載してあります


無菌性結節性皮下脂肪織炎

M.ダックスで多い病気ですが、すべての犬種で発生する可能性があります

現在当院では、3症例を治療中ですが、いずれも犬種はM.ダックスフントです。原因は多様で、症状も多彩です。

症状:発熱(40度前後の微熱)
   食欲不振・活動性の低下
   白血球増多症のみられることがある
   皮下のしこりが特徴、多発的にできることが多い
   皮下のしこりが最初に触知され、次第に表皮近くまで波及する
   しこりの体表に一番近い部分が破裂して、膿様あるいは漿液様の液体を排出する
   以前の手術による縫合糸が原因で発症する場合がある

適切な治療をしないと、いつまでも膿を排出し続け、次第に衰弱していく厄介な病気。


この病気の症状は多様で、発熱・食欲不振のみの場合や、まるでSLE(全身性紅斑性狼瘡)のような症状もあるため、鑑別診断が重要となります。
細菌培養・細胞診・血液検査・抗核抗体検査・病理検査などによって確定されます。

本疾患の多くは治療に反応し、再発のない場合があるといわれています。
しかし、ダックスフントは治療への反応が悪く、薬剤の減量とともに再発することが珍しくないので、飼主様に十分説明する必要があります。事実、当院の3症例とも薬剤減量中に再発を繰り返しております。
治療は、ステロイド剤や免疫抑制剤、テトラサイクリン、ニコチン酸アミド、ビタミンEを組み合わせて使用します。
手術の際に使用した縫合糸が原因になる場合もあり、外科的に縫合糸を除去するだけで治癒する場合もあります。
しかし、ダックスフントのように難治性の場合は、飼主様に多大なる時間・費用・精神的負担が要求される、悪性腫瘍のような疾患です。


症例1

M.ダックスの無菌性結節性皮下脂肪織炎

2歳のM.ダックス、微熱があり、元気食欲なく、股の付け根に孔が開き漿液がでています。他院からの転院で、内股に関しては免疫関与の病気である説明を受けてました。全身状態の悪化、脂肪織炎との鑑別診断が必要です。

体を触診すると、頸部皮下にも3cmの大きなしこりがありました。
培養検査で細菌陰性、血液検査で白血球増多、抗核抗体陰性です。

しこりに針を刺し細胞診をしたところ、膿様液体が採取され慢性炎症像です。組織を採取し病理検査で、化膿性肉芽腫性炎症病変の検査結果です。他院での去勢手術の縫合糸が原因も考えられ、その場合は外科手術が効果的です。

免疫抑制量のステロイドの治療に反応し、頸部・内股のしこりは消失しました。しかし薬剤を減量すると、他の部位にしこりが突然できたり、発熱し元気食欲が消失する状態を繰り返します。現在、縫合糸除去の外科手術を検討中です。


症例2

M.ダックスの無菌性結節性皮下脂肪織炎

1歳半のM.ダックスが元気食欲はありますが、前足の跛行で来院。微熱はありますが、原因不明で鎮痛・解熱剤の投薬をしました。4日後も発熱があり症状は改善していませんが、4日前発見できなかった体側のしこりが触知されました。

もしやと思い、腋下の触診を再度試みたところ、腋の付け根にしこりができていました。鑑別診断のために血液検査、細胞診、培養検査を行いました。血液検査で特に問題はなく、培養検査も陰性です。

細胞診ではこのような非変性性好中球と、泡沫状マクロファージが観察され、無菌性結節性皮下脂肪織炎の可能性が強く示唆されました。培養検査の結果を待って、免疫抑制量のステロイドで治療し、1週間後にしこりは消失しました。

しこりが消失し、ステロイド減量中、突然内股にしこりができ自壊排液。再びステロイドを増量し治癒しました。3度目にステロイド減量中にできたの体側のしこりは、ステロイドの反応がなく免疫抑制剤を使用し、現在維持しております。


症例3

M.ダックスの無菌性結節性皮下脂肪織炎を疑う症例

症例は、8歳M.ダックス、元気・食欲なく40度台の発熱があります。リンパ節炎・関節炎もなく、血液検査、レントゲン検査、超音波検査に異常がありません。抗核抗体検査、クームス検査陰性。原因不明の発熱と仮診断し、抗炎症量のステロイドで治療したところ、平熱になり臨床状態は改善しました。ステロイドを減量・中止したところ、1ヵ月後に同様の症状が観察され、5mmの皮下結節が1つ形成されました。細胞診で十分な細胞がとれず、ステロイドの治療を開始したところ、結節は消失し、臨床状態も改善しました。
この症例は確定診断がなされておらず、たえず不安のままに微量のステロイド剤で治療していました。2年経過したところで、突然、下記写真のように左後肢のパッド直上の部分が腫脹しました。細胞診断を行ったところ、前述の細胞像を確認し、ステロイド剤のみで治療し治癒しました。現在も微量のステロイド剤で維持しております。


突然左後肢が腫れ、細胞診断で皮下脂肪織炎特有の細胞像が診られました。

治療開始1週間後、舐めてしまったため、皮膚の欠損部分ができました。

3週間後には皮膚の欠損も治癒し、未だ発毛していませんが、腫脹はありません。